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ムーブメント Cal.3130 リューズ不良
カレンダー機構を搭載しないノンデイト・ムーブメントCal.3130のリューズ操作不良をご紹介します。
・リファレンス:Cal.3130
・年式:-
・症状:カンヌキ折れ
症状は、リューズを引いて時刻合わせをしようとしても針が動かず、内部からは“カチカチ”と異音がする状態です。
リューズ操作不良の場合、裏周り内に原因のほとんどがあります。
直接確認するためには針やダイヤルを外す必要がありますので、まずは最も可能性の高い「カンヌキ」をムーブメント表側(裏ブタ側)からチェックします。
ムーブメント表側から見たカンヌキの写真です。
写真では分かりづらいですが、先端が折れています。
リューズを引いて、時刻合わせの位置にした状態です。
正常であれば、ツヅミ車がもっと大きくスライドして小鉄車と噛み合うのですが、カンヌキの先端が折れているためスライド量が不足しています。
“カチカチ”という異音は、ツヅミ車と小鉄車の歯先がわずかに接触したときに発生していると思われます。
写真はカンヌキの折れた先端部分です。
新品のカンヌキに交換します。
カレンダーなしのCal.3130(写真下)とカレンダー付きのCal.3135(写真上)のカンヌキの写真です。
カレンダーの有無の違いだけで基本設計が同じムーブメントですが、今回のようなカンヌキの先端折れが発生するのはCal.3130がほとんどです。Cal.3135では同様の症状は聞いたことがありません。もちろん、絶対に折れないわけではないと思いますが・・・。
Cal.3130(写真下)とCal.3135(写真上)のカンヌキの先端部分の拡大写真です。
比較するとCal.3135のカンヌキの方が薄く、折れやすいクランク部分も華奢な印象です。
なぜ、Cal.3130のカンヌキばかりが折れるのか?
両パーツを比較しても作りはほぼ同じなので、強度的な問題というよりはツヅミ車の動き方に原因があると思われます。
リューズの引きが1段階のCal.3130は、2段階のCal.3135よりリューズを引き切った時の衝撃が大きいと考えられます。
また、オシドリの破損もリューズを操作した時に発生します。そして、外部からの力が最もかかるのは、時刻合わせの位置にリューズを引いた瞬間です。
機械式時計の内部はとても繊細にできています。中でも直接人の力が加わるリューズ操作は、各パーツにストレスをかけています。リューズ操作時に少しだけ気を付けていただくことで、余計な出費を防ぐことができます。
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