オーバーホールの必要性

放射性物質の特定


今回は、放射性物質の研究施設をお借りして、夜光塗料にラジウムが使用されていると思われるロレックスを測定した結果についてご紹介します。

・リファレンス:Ref.5512
・年式:-
・症状:-
1960年代前半まで夜光塗料として使用されていたラジウムは、その後使用されることとなるトリチウムと比べ、非常に強い放射線を放ちます。そのため、放射線や放射性物質に関する情報を簡単に調べることができる放射線測定器のサーベイメーターを用いることが有効だと思われます。しかし、あくまでもラジウムまたはトリチウムのどちらかが使用されていることが前提となり、第三の物質(劣化ウランなど)が使われている可能性を否定できません。つまり、放射性同位元素の特定を行う必要があります。



サブマリーナー“Ref.5512”をガンマ線スペクトル測定器にかけた写真です。
破損の恐れもなく非破壊で行えるため、ロレックスの夜光塗料分析に適していますが、測定には大量の液体窒素を必要とするため高額になってしまいます。

グラフは“ラジウム226/スタンダード”のガンマ線スペクトルです。

グラフはサブマリーナー“Ref.5512”のものです。
強さは異なるものの、波形はほぼ一致しているため、使用されている放射性物質はラジウム226であることが証明できました。

グラフはGMTマスターに似せて作られたダイヤルの結果です。
本来の波形とまったく異なっており、模倣品であることが確認できます。

このような検査や測定を行うことで、放射性物質が使用されたモデルの安全性やヴィンテージロレックスの理解が深まります。
また、真贋鑑定にも役立てることが期待できます。ほとんどの模倣品は、外見だけを似せたものですが、中には夜光塗料に放射性物質を混ぜ、検査の対策を行っている個体も確認されていますので、今回ご紹介した機器の使用を含め、多角的に分析することが大切です。



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